Scilab 5.4の新機能

Scilab の新バージョン5.4.0が2012年10月1日ついにリリースされました。機能強化のポイントについてまとめてみたいと思います。なお、Scilab 5.4の新機能の詳細については、YoutubeのScilabチャネルを参照ください。

Scilabデスクトップがデフォルトに

Scilab 5.4の目玉は、Scilabデスクトップと呼ばれる環境がデフォルトになったことでしょう。この種の機能は商用ソフトウエアであるMATLABでもずいぶん前から標準になっており、イメージは非常に近いものです。個人的には、従来のシンプルなコマンドウインドウが好きなのですが、GUI中心の操作での操作性は確実に向上するものと期待できます。変数ブラウザも5.3のシンプルなものに比べて機能強化おり、変数の型などがわかりやすくなっています。

この他、「編集/プリフェレンス」メニューから各種の設定が行われるようになりました。

全般的な動作の高速化

ベンチマークをとったわけではありませんが、グラフィックスのレンダリングや変数ブラウザ、一部の関数などの動作が全般的に高速化されています。体感的にも5.3に比べて高速化されている気がします。

CSVファイルの読込が高速化

この機能は、従来、別モジュールとしてAtomsでインストールする必要があったものをマージしたものです。従来の標準のCSV読み書き関数(read_csv, write_csv)は動作が遅かったのですが、今回導入された関数(csvRead, csvWrite)を使用すると、数10倍に動作が高速化されます。

v = csvRead("dat.csv"); // CSVファイルを読み込む

Scilab Open Data (SOD)形式がバイナリ保存形式の標準に

save関数による保存、load関数による読込時のファイル保存形式としては、従来は独自フォーマットが定義されていましたが、汎用のHDF5形式に基づくSOD形式が標準となりました。5.4では従来のバイナリ形式の読み書きもできますが、将来的な Scilab 6.0ではSOD形式のみがサポートされるとのことです。

SOD形式でファイルを保存する場合、以下のように変数名を""で括ります。

save("val.sod", "a", "b");

変数名を''で括らない場合は、従来のバイナリ形式で保存されます。5.3などの以前のバージョンとの互換性を維持する場合は、このように読み書きします。

save("val.dat", a, b);

XMLファイルアクセス関数の導入

XML形式のデータを読み書きする関数が導入されました。XML形式のファイルを読む場合に便利に使用できると思います。

課題

私のWindows環境では、グラフをクリップボード経由でコピーする機能が動かないようです。バグとして報告済みですので、次期バージョンでは修正されるものと期待します。

日本語化(メニューとヘルプ)は、私が細々と追加・更新しています。launchpadの翻訳システムで訳を作成しているため、具体的な画面表示と対比させた際に違和感がある場合があります。訳がおかしい場合など、個別にコメント頂ければ修正したいと思います。